2018シーズン総括
ジェフ千葉の2018シーズンが終わった。2017シーズンにエスナイデル新監督を迎え、決していいシーズンではなかったものの、終盤の7連勝でプレーオフに滑り込み、プレーオフでは惜しくも敗れたが勢いを持ってシーズンを終えた。オフシーズンも主力の残留に成功。レンタル加入で活躍した選手達も完全移籍で加入と、ひさびさに順風満帆なオフシーズンで来季に向けた期待に満ちていた。
しかし2018シーズンが開幕するとエスナイデル監督は7連勝時の安定していたボランチ2枚のシステムからアンカーに変更。開幕戦ではハイラインの裏を取られ、わずか9分で新加入の増嶋が退場になるなど守備の不安定さが露呈。開幕から4試合で勝点1、失点9と完全にスタートダッシュに失敗した。その後も5節で讃岐に6-1で大勝したかと思えば、7節には大分に0-4で大敗と不安定な試合が続いた。
結局今季の千葉は一度も上位に浮上することなく14位という過去最悪の順位でシーズンを終えた。原因は数字を見れば明らかだ。得点数はJ1に昇格した大分に次ぐリーグ2位の72ゴール。しかし失点数はJ3降格圏の熊本に次ぐリーグワースト2位の72失点。72点も取ったのに得失点差が0という守備に原因がある。最後は3試合連続無失点で終えたが、相手が泥沼の徳島、千葉より下位の京都や栃木であることも考慮に入れなければならない。得点力を褒める声もあるが、他のクラブだって守備を捨てればもっと点を取るだろう。
攻撃面でも得点数こそ多いが、支配率だけ高くシュートが打てなかったり、引いた相手に攻め手がないといった試合も多く見られた。サイド攻撃だけではなく、ダイレクトやワンツーを使った中からの攻撃ももっと見たい。
課題が改善せず
高橋GMは開幕前に「失点の多さが課題」と言っていた。クラブとしても失点を減らさなければいけないという認識を持ってシーズンに入ったはずだ。しかし蓋を開けてみれば守備のことなど考えていないかのような試合を繰り返し、課題は改善どころか悪化した。
サッカーは攻守のバランスが重要だ。攻撃だけでも守備だけでも勝てない。優勝した松本は失点が34とリーグ最少。千葉の半分以下だ。2位の大分は得点が76でリーグトップ。自動昇格したこの2クラブは共に得失点差が20以上ある。
守備に原因があるのは明らかだが、DFの選手達を責めているわけではない。むしろDFやGKの選手達は気の毒だとさえ思う。サッカーの守備は11人でするものだ。これだけの大量失点をするのはチーム全体としての守備に欠陥があるということ。ハイラインという極端な戦術はその原因の大きな一つだろう。DFやGKの選手達は何度もハイラインの犠牲になった。
以前に比べれば無茶なハイラインは少なくなった。ラインの位置に試行錯誤している意図も見える。勝てなくなった時期にハイラインハイプレスを止め、堅い試合で勝点を拾うという試合も数試合あったが、結局はアンカーシステムでハイラインハイプレスに戻す。このスタイルこそがエスナイデル監督のアイデンティティだからだろう。
相手に応じて策を講じるより、あくまでも自分達のスタイルで自分達が主導権を握るサッカーを目指す。しかし残念ながら2シーズンを終えてその成果が出ているとは言い難い。千葉というクラブを監督の理想を追い求める場にされては困る。千葉の目標はJ1昇格なのだ。結果が求められている。2シーズンを終えてのこの結果、内容はとうてい満足できるものではない。
J1では横浜Fマリノスがハイラインハイプレスで戦っているが、11月18日時点で得点数はリーグトップの54、しかし失点数はリーグワースト3位の52。リーグトップの得点力でありながら11位に沈むという千葉と同じような状況になっている。J1レベルの選手ですらこのサッカーに安定を求めるのは難しいのだ。ましてやJ1昇格に向けて2位以内に入るという目標に適したスタイルだとは思えない。
守備的なサッカーをしろとは言わない。ベッタリ引いてカウンターを狙うようなサッカーは千葉のスタイルではない。アレックス・ミラー監督時代のように、守備的なサッカーで1-0を狙うより、オシム監督時代のように走力で圧倒し次から次へと相手エリアに入るようなサッカーが見たいので、攻撃的なサッカーを掲げるのは大賛成だ。だたもう少し守備に重きを置かなければ昇格争いは出来ないだろう。
課題は明確だ。守備の安定、強度を上げること。攻撃のバリエーションを増やすこと。しかしわかっていながら改善できなかったこの課題。改善するべくクラブはどんな対策を取るだろうか。